マイミクのなおさんに誘われて、京都大将軍商店街の百鬼夜行に参加してきました。もう、朝8時に無理やりお願いし、散髪に行ってから出撃したくらいの気合の入り方である。ちなみにその散髪のさい、オーナーからまたなんかすごい話が出たが、機会があれば話そう。ホント底知れねえなー。
で、その「大将軍商店街の百鬼夜行」というのは何かというと、話せば長いことながら、大将軍商店街で行われる百鬼夜行のことなのである。完。
……で終わると怒られそうなので、ちびっとだけ語ると、古来より伝承に残る妖怪たちのパレードに「百鬼夜行」というものがございますな。年を経た器物の精が、妖怪となって深夜、徒党を組んで練り歩くというこの伝承。その通過するルートこそ、大将軍商店街の中を貫く「一条通り」だったという説があるのですよ。そして、その伝承を下敷きにこの商店街が妖怪をモチーフにした町おこしを始めたのだ。「妖怪ストリート」を名乗り、妖怪にちなんだ名物料理や装飾を展開。そしてそのハイライトとして企画されたのが、秋祭りにおける「百鬼夜行」行進だったのである。妖怪の紛争をしたウン十人の集団が練り歩くそのさまは、装束の圧倒的クオリティも相まって大人気となり、みごと多数の見物客を呼ぶ一大人気イベントとなって、現在に至っている。
まあ、詳しくはここの「妖怪ストリートの由来」を読むがいい。
◆大将軍商店街 妖怪ストリート公式HP
http://kyotohyakki.com/web_0317/top.html
この「百鬼夜行」は参加自由。むしろ、100体集まって練り歩きたいということで、最近ではボランティアを積極的に募集している。妖怪好きが高じて日本各地の妖怪検定をかたっぱしから打破し、三千世界に勇名を轟かせる”ザ・妖怪マニア”なおさんがそれを見逃すわけはなく、3年ほど前から毎年参加していらっしゃる。そのご縁で俺もお誘いをいただき、二年ほど前に太秦映画村で行われた百鬼夜行に参加。見事味をしめ、今回は二度目の参加となったわけなのである。
そして、当日15時半。俺は一人、集合場所である子供文化会館に向かった。なおさん達は交流会に参加中とのことで、一人で受付を済ます。
「はい、ではお名前をお願いします」
「ええと、真。という者なんですが」
「……ありませんね」
「え? ああ! ネットのお知り合いの方が代表で予約してくださっているので!」
「ああ、そうなんですか。では、そのかたのお名前は?」
「……」
「……」
し ま っ た 、 ハ ン ド ル ネ ー ム し か 分 か ら ね え 。
なおさんの本名なんだっけー!?
「え、ええと! うわ、いや、あのその! 今友達交流会に行ってらして!」
「あ、ひょっとしてなおさんですか? ○○さんですねー」
「はい! その人です!!!」
スタッフさんまじ優秀。お礼を申し上げて伏し拝み、俺は記帳して中へと入った。幸先の良いスタートだぜ、とうそぶきながら入場したその中は。
妖 怪 の 海 。
地面に置かれた妖怪、妖怪、妖怪!! この中から、好きな妖怪を選び、本日の装束とするのだ。うわー、テンション上がるわー。カッパもいいし、天狗もいい! でもどうせなら、目立つのがいいなあ♪ どれにしようかな! とウロウロ見てまわる俺の目に、一つの妖怪が飛び込んできた。あれは、まさか! 二年前、このお祭りを観光客として見学に来たさい、大人気だった妖怪じゃないか! できるなら、アレ着てみたい! でも、スタッフさんとかが着る用の、スペシャルな奴なんじゃないかな? あーでも、着てみてー!!
そう思った俺は、近くにいたメガネ美人のスタッフさんに聞いてみた。あの、あれを着てもいいんですか!?
「あれですか? 大歓迎ですよ! ちょっと重いですけど、首の筋力に自信があるなら、是非!!!」
なんと、逆に歓迎されてしまいましたよ! そうかー、OKなのか。よし、じゃあ、君に決めた! 首の筋力に自信があるわけじゃないけど、頼むぜ、今日の相棒!
見 越 し 入 道 。
首だけで1mくらいあって、超でかいのである。うひょー! テンション上がるー!!(*≧∇≦)ノシ
しばらくして、交流会から戻ったなおさんたちが合流し、続々と自分の相棒達を決めていった。
なおさんとそのお友達&通りすがりの人。ちなみになおさんの基本コンセプトは「目が見えやすいやつ」だった。さすがプロ。見た目だけで選んだ俺とえらい違いだぜ!
なおさんが、交流会で仲良くなったという、おでんさん。仮面の下は、ちょっと庵野秀明監督に似た風貌の、知的イケメンであった。ちなみに、後に大学の後輩であることが判明し、俺の態度が5cm大きくなった。態度はでかいが、人間は小さい俺なのである。
なおさんのお友達である好青年、ミドウさん扮する赤鬼とツーマンセルで。ちなみにこの後赤鬼はちびっこたちになつかれまくって大人気。青鬼は横で「同じ鬼なのに! うらやましぃぃん!」と、嫉妬に打ち震えていた。関係ないが、横で写真を撮っていたなおさんの会社の先輩さん(居合やってる癒し系)は帰りの電車内で「三徳山三佛寺・投入堂」に行った経験を俺に話して下さり「うらやましぃぃん!」と、俺を嫉妬に打ち震えさせてくれたって関係ないですねそうですね。
同じくなおさんが交流会で仲良くなられたレイヤーさん。しまった、お名前お伺いしてなかったぜ! 衣装はなんと自作である!! ちゃんと実際の化け猫(ってのも変だが)の伝承を踏まえて製作されたそうですが、詳しく聞きそこねました。尻尾が七本あるっぽいし、佐賀・秀林寺の七尾の白猫かなあ? 何でもは知らないわよ、知ってることだけな委員長ちゃんじゃないことだけは確かだ。俺の写真の腕がイマイチなせいで申し訳ないが、この2万3千倍はお綺麗だった。あと、尻尾がもふもふ。尻尾がもふもふ。(大事なことなので2回言いました)
毎回、その周りだけ日曜朝8時な鵺様。立てばヒーロー座ればイケメン、歩く姿は主題歌付きであり、格好いいポーズを取るたびに悪い妖怪1体が消滅し、子供5人が歓喜し、女性10人が失神するというもっぱらの噂。
百鬼夜行の先陣を務める妖怪界のビッグボスぬらりひょん様。残念ながら孫は来てないようだった。
――などなど、これら超絶クオリティの妖怪たちが列をなして練り歩くのである。こいつぁ燃えるぜ!!
その後、百鬼夜行で練り歩くコースを実際に歩きながら諸注意をうかがったのち、一旦自由行動の時間となった。焼きそばを食ったり、百鬼夜行の超絶有能スタッフ様であるコウノさん作の妖怪絵草紙の小冊子を買い込んだり、妖怪酒を買ったり、振る舞い餅をもらったり、ちびっ子が顔に妖怪ペイントをしているのを横から覗いたりしているうちに、ついに出発の時間がやってきた。
18時30分。うまく雨もやんだその瞬間が、我々の旅立ちの時であった。ぞろぞろと多種多様な妖怪たちが子供文化会館から現れ出ずるなか、俺はしんがりを仰せつかった。理由は簡単。遠くからでもよく見えて、「あそこが最後かー」とスタッフさんに分かりやすいからである。スタッフにやさしい妖怪、見越し入道なのである。
見越し入道の仮面は、意外とハードである。熱い空気がこもり、息はし辛い。視界は首筋の細い窓から漏れ見えるわずかな空間だけだ。その小さな窓から見える景色をたどり、必死で先を行く俺を、赤鬼・青鬼が先導してくれた。なんていい鬼たちであろうか。優しい鬼コンテストがあれば、「泣いた赤鬼」by浜田廣介の赤鬼・青鬼もぶっちぎり、優勝間違い無しのイケ鬼達であった。
隊列はゆっくりと進み、ついに商店街の中へ入った。
――その瞬間。
うわん!と歓声が上がった。道を、人が埋め尽くしていた。老若男女、様々な人達が、すし詰め状態で隊列を待ち構えていた。オレンジ色の街灯の明かりを切り裂いて、無数のフラッシュがまたたく。大人たちが歓声を上げる一方で、ちびっ子達の泣き叫ぶ声が聞こえる。その阿鼻叫喚の喧騒の中で、しかし観客は一様にキラキラとした目で妖怪たちを見つめ、一様に一つの言葉を発していた。
「なにこれ! すごい! すごい!!!!」
そうでしょう! すごいでしょう!! 得たりとばかりに、俺は仮面の下で破顔した。この衣装のクオリティ! 百鬼夜行にかけるスタッフさんと参加者の熱気! すごいんですよ! いや、俺は何もしてないけど!!
こみ上げる笑を押し殺しながら、俺はうっそりと歩を進めた。予想通り見上げ入道さんは大人気で、写真も撮られまくりだった。ちょっとしたスター気分である。300mほどの道を1時間かけて練り歩く夜行はすごくのんびりした行程のはずなのに、楽しい時間ほど早く過ぎるもので、「なんだこれ!? 首ながーい!!」とカメラを向ける人達に、ある時は立ち止まり、ある時は近づいて脅かし、ある時は一緒に写真を取ったりしているうちに、夜行はあっという間にその終わりの時を迎えた。最高の、一夜であった。
今、家に帰って振り返ってみるが、いや、ほんとうに楽しかった! 皆のあの喜びの顔と、熱気が忘れられません。まさしく「めくるめく」という言葉がぴったりの、幻のような一夜でした。
計画し、ご苦労されたスタッフ様、本当にご苦労さまでした。あと、今回は夜行中に邪魔するわんぱく小僧どもがいて大変だったんですが、京都プロレスの方が叱ってくださっておとなしくなったそうです。素晴らしいぞ京都プロレス! 今度見に行きます!!(本気)
いや、楽しかった! 誘ってくれたなおさん、ありがとう!
――また行くぜ!!
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