2012年11月2日金曜日

京都維新の日。お昼ごはん編。



 この前大学の先輩のN先輩&友人Mと一緒に、「京都維新の日」っつーのをしてきましたのよ!

 去年友人Mとはじめて行った「井伊美術館」って私設美術館が、そりゃもうものすごいとこでしてね。そこらの美術館ならガラス越しにメイン展示物として大事に飾られているようなシロモノが、手が触れられそうな位置にスガン!とそのまま置かれてるというそのワイルドさに、カルチャーショックというか、「美術館」というものに対する味方が根底から覆されるという、なんともものすごい体験をしたのである。

 あまりにすごかったので、また行こう! 次は是非他の人も連れて行って、我々のこの衝撃を味わってもらおう!と誓ったわけなのだが、その時「来年24年度は『幕末井伊直弼の時代』ってテーマで特別展を開きますよ」という話を聞き、(☆▽☆)キュピーンとひらめいたのだ。

 そうだ! それを見がてら、京都の維新関連の史跡をめぐる「京都維新の日」ってのをやろう、と。1年経って、ようやくそれを実施できたわけなのである。まあ、結局、ほとんど「京都御朱印巡りの旅」になったけどな! なぜだろうね友人M! まあ、大変楽しかったからいいけど!!(最近大学のサークルメンバーの間でご朱印集めがブームなのである。俺は手を出してないけど)


 で、そのメインイベントの一つとして、行って来ましたよ! 『幾松』に!!!!


 知らない人のために言っておくと、『幾松』は京都は木屋町にある料亭さんのお名前である。京都でも有数の格式を誇る名料亭として令名を馳せるお店なのだが、それだけではない。この『幾松』、明治政府の元勲にして、維新三傑の一人としても数えられる木戸孝允(桂小五郎)が愛妻松子夫人と過ごした寓居跡で営まれており、なんと当時の設備がそのまま残されているという、建物自体が登録有形文化財な、大変歴史あるお店なのである!


◆上木屋町 幾松
http://www.ikumatsu.com/

 しかも、残された設備が半端ではない。「不意の敵にそなえた抜け穴、飛び穴、のぞき穴、つり天井など出来る限り当時に近い状態で保存」されているのだ! 幕末ファンの聖地と呼ばれているのも納得できよう。ちなみに『幾松』という店名は、その松子夫人の藝妓時代の名に由来している。

 「京都維新の日」に食事するのに、これ以上ピッタリなお店があるであろうか? いいやありはしない(反語)!!

 自らの思いつきに快哉を叫びつつ、颯爽と12時半に予約を入れたその日!


『(prrrrr.....ガチャ)ああああああの、幾松さんでしょうか!? よよよ予約した真。というものですが、すすすすすみません。みみみ道が思ったよりも混んでまして!!!』


 我 々 は 見 事 に 遅 刻 し て い た 。


 うっかり、朝に神社を回りすぎたのである。土曜の京都の道を舐めてはいけない。


『ああ、大丈夫ですよ。お気をつけてお越しくださいませ』

 大変ご丁寧なお言葉に感謝を述べた我々が、お店に着いたのは12時40分のことであったという。そして。





「ここここココかー!?」
「ぬお、敷居たけー!?」
「入っていいの!? マジ入っていいの!?」
「ななな何をおっしゃる皆の衆! 予約しているのですよ! 我々は『お客さま』なのですよ!?」

 と、格式の高さにおもいっきり腰が引け、お店に突入できたのは、それからさらに5分後のことであったという。合掌。


 そして、通されたお部屋はと申しますと。









 大 部 屋 貸 切 状 態 。


 おおおおお!!!! 行楽シーズン寸前で少し空いていたのか、それとも他のお客さんはコース料理で個室ばっかりだったのか、大部屋のお客はをその日、我々のみであった。


「ぬおー!? すげええ!?」
「坪庭ありますよ坪庭!?」
「せせらぎの音落ち着くー」
「池に錦鯉! 錦鯉があああああ!!?」

「いらっしゃいませ。今日は幾松へお越しいただき、本当に有難うございます」

テンパる我々に向かい、キレイな仲居さんがそうおっしゃった。幾松ではお部屋ごとに、専用の仲居さんがついてくださるのである。さすが高級料亭!

「では、準備をして参りますので、少々お待ち下さいませ」

と、仲居さんが姿を消したその瞬間。


「それー! 今だー!!」
「写真写真ー! 」
「バシャバシャバシャ!!!」

そこには、狂ったように記念写真を撮る我々がいたと、後世の歴史家は伝えている。


そして。


「お待たせしました」

と、仲居さんがお戻りになった頃、何事もなかったように座っている我々。なにげに荒い息と、大騒ぎしてたことから多分バレてると思うが、そこはそれ、日本を代表する高級料亭である。何食わぬ顔でスルーしてくださるのである。

「お食事前に、よろしければ、歴史のお話などさせていただきましょうか?」


キタ━━━━(゚∀゚)━━━━!!

食事の前にメインディッシュですよ! 我々は今日、そのために来たのである! ぜひに!とお返しすると、仲居さんは我々を「幾松の部屋」へと案内して下さった。当時維新志士たちが会合を持った、つり天井などが残されている、当時の息吹を色濃く今に伝える部屋である。

 そこで先にお待ちになっていた仲居さんが、我々に歴史の話をして下さった。

 木戸孝允と幾松の馴れ初めについて。

 維新の話について。

 そして、この部屋に隠された仕掛けについて。


「いつ敵方の志士に襲われても逃げられるように、忍者屋敷のように、秘密の見張り穴や抜け穴など、色々な仕掛けがしてあります。ひょっとしたら私達もまだ知らない仕掛けもあるかも知れないほどです」

「抜け穴と言われていますが、元々はこのあたりの家にはだいたいあった、川へ降りる勝手口のようなものだったそうです。護岸工事で高くなりましたが、昔は建物から鴨川まで5mくらいの高さがあったそうですよ。部屋を出てすぐの通路に床板が外れる仕組みになっていて、敵が襲ってきたら、そこからすぐ逃げられるようにしていたそうです」

「今は整備されて明かりもありますが、昔の鴨川沿いは夜ともなれば明かりもなく真っ暗で、しかも人の背丈ほどもある草で覆われ、そこに隠れればまず見つけられなかったそうです」

「天井の真中部分が色が違うでしょう? その部分が吊り天井になっていて、昔はそこに重い石がいくつも載せられていたそうです。今は撤去してありますが、敵に襲われた時、道連れにするためのものだったそうですよ」


 などなど、非常に興味深い話を、実物を前に話してくださった。しかもそれを、部屋にある座椅子に腰掛けて聞けるのだ。なんという贅沢。

 ご説明は20分ほどであったろうか。色々質問なんかもして大変楽しみまくった我々が部屋に戻ると、今日のお昼ごはんであるところの、お弁当が準備万端、テーブルの上へ鎮座ましましていた。








「うおー! きれー!!」

「「「いっただきまーす!!!!」」」

と、食べ始めたお弁当でしたが。


 こ ら 旨 い わ 。


 あっさりとした薄味なのに、きちんと味があって、しかも「もうちょっと醤油足したいな」とか全然思わないの。多分、出汁が素晴らしいからなんだろうなあ。

「京の薄味か。友人Mはアレか、味がしねーぞ! 首跳ねろ!とか言うのか」
「は?」
「んで、田舎者用の味濃いやつを持ってこられてうめーうめーって言って食う、と」
「信長かよ!? 超うまいと思ってるよ! あ、お姉さん、冷酒を願いします。え? 限定酒が辛口と純米と甘口がある? 一番人気は辛口? じゃあそれで!」
「てめえ、昼間っからいいご身分だな!?」
「真。君……」
「どーしましたN先輩?」
「今まで真。ツアーでいろんなとこに行ったが、最高レベルの場違い感だな、我々」
「なにをおっしゃる! もういい年した我々ですよ!? 似あってますよ多分おそらくひょっとしたらきっと!」
「いやいやいや! この格式に見合うには、まだ年も人生経験も足りてないよ我々!」
「大丈夫ですって! 根拠はないですけど大丈夫ですって!」
「冷酒うめー」


 などと(小声で)ギャーギャー言いつつ、1時間半ほどかけてゆっくり召し上がったお料理はと言いますと。

 お弁当。食前酒はリンゴ酒。すげえさわやかな飲み口だが、意外に度数キツイので気をつけろ!

 中の料理は何をか言わんや。全部うまい。




 天ぷら。衣が薄くて、素材の味しっかり。熱々ではふはふ。塩とつけ汁、どっちで食べても美味しい。




 汁とご飯物。ご飯、粒が立っててツヤツヤ。




 デザート。俺が史上最強に好きな果物である梨だったので、喜び300倍。シャクシャクで甘々でむちゃ旨い。




 はー、満足、満足。

 いちいち盛り付けと味が見事なだけではない。出てくるタイミングがまた絶妙で、さすが会席料理の名店だと感激させられました。あと、お茶が超うめーんだ、コレが!

 終ったあと、いいましたよ。


「料理美味しかったねー」
「真。君が『身体の中がキレイになるような食事』って言ってたけど、気持わかるわ」
「だしょー!」
「すごい、贅沢な時間でしたね」
「せやねー。大人になってこそ分かる時間って感じやね」
「もう、やり遂げた感半端ないです。まだ、お昼ってのが信じられん」
「ホント、昼から美味しいもん食って酒飲んで。まさに大人の楽しみだな!」
「ダメ大人だー! ダメな大人がここにいるぞー!?」


 帰りに聞いたところによると、幾松は旅館として泊まることもできるらしい。一度、泊まってみたいものである。

 歴史ある建物に手で触れ。逸話を耳で聞き。料理を舌で味わい。装飾を目で見て。清澄たる空気を胸いっぱいに吸い込み。

 まさしく歴史を五感全てで体感した我々は、胸に大きな満足を抱えて幾松を出たのであった。続く!

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